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​当館におけるユスリカ対策

2018年頃から本格的に当館内で大量発生し始めたユスリカ対策の現在の状況です。

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ろ過装置にびっしり張り付いているユスリカの幼虫

​猛威を振るうユスリカ

ユスリカは、その形状から蚊に非常に似ていますが、ハエの仲間で、​蚊のように血を吸うくちばしがないため、人間を襲う事はありません。

​しかし、当館のような狭い場所で大繁殖されるとユスリカが人の目や口や鼻に入る事があり、特に来館された方を大変不快にさせてしまいます。

またアレルギーを人によっては引き起こす可能性があり、人間にとっては害虫です。

夏場に頭上に蚊柱が立って、気持ち悪く感じた人も少なくないでしょう。実は​あれは蚊ではなくユスリカです。

そして何より、自然界ではユスリカは水の浄化を促しているとされていますが、

水槽という狭い空間においては、魚の命綱である「ろ過装置」に張り付き、ろ過機能を著しく低下させ水を汚し、魚の体調を崩させ、最悪死に至らしめます。

その為、メンテナンス作業(ろ過装置を取り換え、日干しする)も頻繁に行う必要があり、水族館ボランティアの労力を著しく低下させると共に、メンテナンス作業によってそれまで水槽内で水を綺麗にしてくれるバクテリアをも激減させてしまうため、水槽内の環境が一定化せず、魚の体調を崩させてしまうのです。

当館で猛威を振るユスリカは
​ウスイロユスリカ

現在、当館では日本において【ユスリカ研究の第一人者の山本直先生】

にご助言を頂きながら現在、撲滅対策を進めております。

​山本直先生プロフィールはこちら

山本先生によると、

当館で問題を起こしているユスリカは、

和名 ウスイロユスリカ
学名 Chironomus kiiensis 

この種は、夏季に水田で大量発生することが知られており、食品工場でも大発生事例があるとの事です。参考URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pestologygakkaishi/17/1/17_KJ00005621912/_pdf/-char/ja

山本先生には実際に、当館の実情と水族館内の構造について視察・調査頂いた結果、当館の大発生は

外からユスリカが侵入した事が原因ではなく、人間の移動によってもたらされた可能性が高いとの見解でした。

​​

またすでに当館内での繁殖サイクルが確立され、何世代もの世代交代している事がわかりました。

ちなみにユスリカは、近親交配しても遺伝的にその数が減るという事は確認されていないそうです。

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駆除を進めてもいたちごっこ?

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​ユスリカ対策を進めるにあたり、これまで主として使用してきたのが薬剤投与でした。

​ユスリカは脱皮を繰り返すことによって成虫となるため、その脱皮を阻害し脱皮不全を起こして駆除する方法です。

投与当初は大変効果がありユスリカの大量発生を抑制する事に成功しました。水面に張り付いた卵塊も確認できなかったため、撲滅できたと思い、薬の投与を終了。

そうしたところ、ある日突然、またユスリカが大量発生したのです。

​調査した結果、ユスリカはそれまで視認できていた場所での卵を産む事を止め、人間に視認できない水槽の隙間・へりなどに大量に産み付けている事がわかりました。そして人間がいる日中には姿を現さないように人間の手が届かない部屋の隅の隅で大量にジッとしている事が分かりました。

​魚以外にも爬虫類や両生類を飼養している関係上、殺虫剤の使用は限られ、できる事があるとすれば薬の投与を繰り返すことでした。

ただ当館で繁殖するユスリカは薬に対しても耐性がついてきているようにも思います。​

​その為、投与の回数も増えてしまいます。

しかし、どんなに魚に無害といっても薬を何度も投与すれば免疫能力が低下し魚に異常をきたし、残念ながら死に至る事も多々あり、希少種がなくなってしまう事もありました。

そのため、薬の再投与の時間的な間隔の制約ができてしまいました。

その隙をユスリカがついてきたのか、通常繁殖サイクルは1.5月~3か月の間と言われているところを、当館のユスリカは繁殖サイクルを薬の投与の間隔を知っているのか1ヶ月、3週間、現在は2週間程で繫殖サイクルを完了するようになってきています。

山本先生曰く

「当館のユスリカは通常のウスイロユスリカの体長よりもかなり小さい」

との事。

結論としてユスリカは大きさを犠牲にする事で、繁殖サイクルの期間を極端に短くする事に成功しているようです。末恐ろしい生の本能です。

ユスリカのサイクル:ウスイロユスリカの場合は1.5ヶ月~3か月

​画像のサイクルはセスジユスリカ

出展元:ウルトラがいちゅう大百科

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殺虫剤の使用が限られている為、虫取りシートを現在使用しています。

​だいたい 1ヶ月で交換しないといけません。

駆除剤投与と生物兵器とオゾン水
​氷結兵器と殺虫灯

​山本先生より、「水族館内のみで大量発生の事象が起きている為、逆に言えば、撲滅も最終的に可能ではないか」と見解を頂きました。

当館では、この言葉に希望をもって、ユスリカは紫外線に集まる性質をご教授頂き、​現在は殺虫灯を設置しています。

また水槽のヘリについた卵や部屋の隅に隠れるユスリカに対しては現在、殺虫成分のない氷結スプレーを使用し凍らせて殺虫しています。

ただ氷結スプレーは通常の殺虫剤に比べて非常に単価が高いです。

また薬剤に弱い魚の水槽にはユスリカを食べるコリドラスやドジョウなどの生物兵器を投入しています。ただこちらも成果は限定的です。

薬剤の投与も慎重に量を測りながら行いつつ、現在はオゾン水も使用しています。オゾン水はユスリカの繁殖を抑制する事で知られています。当館でもオゾン水を投入した水槽は現在繁殖が抑えられています。

ただオゾン生成器は大変高価であるため、十分な個数に達すことができていません。また同時に高圧電流が流れている為、長時間生成すると故障してしまうので、こちらも細心の注意が必要となります。

現在は、①殺虫灯 ②氷結スプレー ③薬 ④オゾン生成器

を使用しユスリカ撲滅に向けて対策中です。

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ただユスリカの対策用資材は大変高価なため、水族館のみでは費用の面で賄う事が大変厳しい状況です。何卒ご支援の程宜しくお願い致します。ユスリカ対策品は物品寄付にてお願いしております。

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